Premiere Proで映像クリップの補正(明るさ・彩度・色調)をする方法
せっかく撮った映像。
でも、見直すと全体的に暗くなってしまっていたり、顔色が病人みたいになってしまったり……なんて事もありますよね。
Premiere Proでは色相や明るさ・トーンなどを補正する機能も用意されています。2022年から登場した「自動補正」も高機能。
短時間で簡単に映像のクオリティをアップできる、補正機能を使ってみましょう。
Premiere Proでのカラー補正方法
Premiere ProにはLumetriカラー(ルメトリカラー)というカラー調整ツールが用意されています。Lumetriカラーには、ホワイトバランス、露光、トーン、色調など、動画編集に必要なカラー補正機能がほぼ全て含まれています。
Premiereでは基本的にLumetriカラーを使って、動画のカラー補正行います。
カラー補正操作を試す準備
Premiere Pro入門・基礎シリーズの記事と一緒にPremiere Proを操作された事がある方は、下図のように既存のシーケンスを複製すると、すぐにカラー補正の操作をお試しいただけます。
今回はじめてPremiere Pro操作を一緒に行う方は、デモで使用している動画素材(`.mp4`)をご利用しただけます。お好きな映像を使用して頂いても構いません。
以下の無料講座では、Premiere Proのプリセットや基本操作方法を解説しています。はじめてPremiere Proにふれる方は、こちらを確認して頂くと本記事の内容が分かりやすいです。
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Lumetriカラーの「基本補正」
早速、Lumetriカラーを使ってみましょう。
ワークスペースプリセットを“カラー”にすると、右側にLumetriカラーパネルが表示されます。
Lumetriカラーパネルには6つのタブが用意されています。
- 基本補正
- クリエイティブ
- カーブ
- カラーホイールとカラーマッチ
- HSL セカンダリ
- ビネット
基本設定をクリックして開いてください。
基本補正タブ内にはLUT、自動、カラー、ライトの4項目があります。
それぞれ何ができるか、見ていきましょう。
LUT
LUT(Look Up Table)は、画像の色をどう調整するかの定義です。
色調補正をしてくれる変換フィルター、カラー補正設定のプリセットのようなものです。
試しに、プルダウンでLUTを使用してみます。
かなり変わりました。
が、やり過ぎ感があったり、汚く見えてしまっているのではないでしょうか。
実はLUTは、Log撮影という、色情報が多く入っている動画の編集に使うことが多い機能。LUTはワンクリックで補正が終わるという利点はあるものの、動画に合わないLUTを適用すると補正が上手くいかないこともあります。
今回の素材も、フリーのイメージ映像などを使用する場合も、LUTではなく後ほど紹介する「Look」という機能の方が扱いやすい事が多いです。
LUT設定は「なし」に戻して、個別に調整してみましょう。
自動補正
2022年、新たにPremiere Proに「自動補正」の項目が加わりました。
ボタンをクリックするだけで、かなり良い感じに補正してくれます。
下の「強度」スライダーでは、補正効果をどの程度適用するかを設定できます。
ゼロが自動補正を適用していない状態、数値が増えるほど補正が強くなります。
新しく追加されたPremiere Proの自動補正機能は、かなりレベルが高く、強度の変更程度で基本的な補正は出来てしまうことが多いです。
違和感がある場合は、その下の「カラー」と「ライト」の項目を使って、個別に調整していきましょう。
カラーの補正
ホワイトバランス
ホワイトバランスでは、白く見えて欲しい場所を基準にして、全体の色調バランスを調整します。
スポイトアイコンをクリックして選択。
白く見えて欲しい太陽の中心、飛行機雲のあたりをスポイトでクリックしてみましょう。
クリックした場所に合わせて、色温度と色かぶり補正が変更されます。
スポイトを使わず、色温度、色かぶり補正を手動で設定することも出来ます。
色温度は、クリップ全体の色調を暖色系で見せるか・寒色系で見せるかを調整します。+に調整するとオレンジ系の色が、-に調整するとブルー系の色が強調されます。
色かぶり補正は「色が変わってしまった白色部分」を補正する機能。
という事になっていますが、上図を見て頂くとわかるように、大きく動かすとスライダーの色のカラーフィルターを適用したような見え方になります。
ホワイトバランスだけで補正しようとすると、とんでもなく不自然になってしまいます。ホワイトバランスはあくまでも“バランスの調整”と考えて、次のトーン設定と組み合わせて補正していきましょう。
彩度
彩度ではカラーの鮮やかさを調整します。
彩度が高いほど鮮明な色に、0にすると白黒になります。
ライトの補正
ライトの項目では、明暗やコントラストの調整ができます。
それぞれの項目でどのような変化があるのか、見ていきましょう。
露光量
露光量は、映像に含まれている光の量を指します。
不足している場合は暗く判別しにくい映像に、多すぎる場合は白飛びが起こります。
コントラスト
コントラストは、映像内の明るい領域と暗い領域の明るさの差です。
コントラストを強めるとメリハリがあり鮮烈なある印象に、コントラストを弱めると柔らかい印象になります。
ハイライト
ハイライトでは、映像内で「明るく写っている場所」の明暗を調整します。
プラスにするほど、明るい部分がより明るくなります。
露光を使って映像を明るくした場合、全体的に白っぽくなります。
ハイライトでは、明るく写っている部分を中心に補正します。コントラスト感や色味が損なわれにくいですね。
シャドウ
シャドウでは、映像内で「暗く写っている場所」の明暗を調整します。
マイナスにするほど、暗い部分がより暗くなります。
白レベル
白レベルは、映像内で最も明るい部分の明暗を調整します。
ハイライトよりも、特に明るい部分に絞って明暗補正ができるイメージです。
明るい(白っぽい)部分を際立たせたい時に使えますが、白飛びしやすいです。
また、露光やハイライトなどと組み合わせて調整することで、明るくすると白飛びしてしまう部分の救済にも使います。
黒レベル
黒レベルは、映像内で最も暗い部分の明暗を調整します。
シャドウでの調整よりも、更に暗い部分に絞って補正をするイメージです。
黒レベルは、シャドウよりも暗い部分を際立たせるのでコントラスト感を出しやすいです。露光やシャドウなどと組み合わせることで、黒つぶれしそうな部分の救済にも使います。
設定した補正を取り消すには?
Lumetriカラーの補正は、各タブのチェックを外すと非表示(非適用)に出来ます。
基本補正をイチからやり直したい場合はリセットボタンを使います。
Lumetriカラーで行った補正全体を非表示にするときはfxボタンをクリック。
補正を破棄したい場合は、プルダウンから「消去」を選択します。
基本補正以外で行う映像の「補正」
Lumetriカラーには、基本補正以外にもいくつもタブがあります。
そのなかでもPremiere Proでよく使われる補正・便利な機能をピックアップしてご紹介します。カラー補正の種類を知っていると、使い分けもしやすくなりますよ。
目的に合わせた、2つのカラー補正を知る
映像制作・動画編集では、素材映像の色補正を以下の2つに分けています。
- カラーコレクション(Color Correction)
- カラーグレーディング(Color Grading)
カラーコレクション
カラーコレクション(カラコレ)は、肉眼で見たような自然な色味になるよう、映像を補正することです。「基本補正」で行った補正も、カラーコレクションに含まれます。
撮影機材や天候などによって、映像の色にはバラつきが生じます。
照明の色が写って白い服がオレンジになっていたり、蛍光灯の下で撮影してモデルの顔色が悪く見えたり。照明が強すぎて白飛びしているなどのケースもありますね。
こうした映像を、それぞれナチュラルに見えるよう補正していくのがカラーコレクションです。カラーコレクションを行うことで、映像全体の色調を均一に整え、カットが変わっても違和感を与えないよう統一感を出します。
カラーグレーディング
カラーグレーディング(カラグレ)は、映像に臨場感や雰囲気を出すために行う色補正です。一般的にはカラーコレクションによって補正を行った後、必要に応じてオプション的に行われます。
カラーグレーディングでは、作品のテイストや映像のイメージに合わせてカラーを補正します。回想シーンなどで使われるセピア色の映像や、SNSでも話題になった青緑(teal)とオレンジ色を強調させた“teal & orange”などもカラーグレーディング。自然な色味に補正するカラーコレクションに対して、カラーグレーディングはイメージを強調するために“盛る”補正です。
クリエイティブタブとLook
Lumetriカラーパネル、基本補正の下にはクリエイティブという項目(タブ)があります。こちらはカラーグレーディングに使用することが多いタブです。
LOOKとは
LOOKは色調を変更することができる、カラー設定プリセットです。
LOOKは通常の設定で撮影した映像や、LUTを適用済みの映像に対して適用することができることが特徴です。
LUTは基本補正、撮影時に肉眼で見た景色に近づけるために使います。
LOOKはInstagramやTikTokにあるフィルターのようなもの、自分が見せたい色味・雰囲気に映像を調整するために使用します。
LOOKを使用してみよう
Lookのプルダウンから、適当にどれかを選択して適用してみてください。
色調・雰囲気が変わると思います。
選んだプリセットによってはモノクロになるものもあるでしょう。
自動補正と同じく、強さのスライダーを動かすとLOOKの適用度合いが変わります。
調整では、各項目ごとに調整することも出来ます。
プレビュー(プログラムモニター)を見ながら、それぞれ動かしてみましょう。例えば、シャープのスライダーを動かすと水面がくっきりと、エッジが立ったような見え方になります。
カラグレに正解はありません。
まずは自分が「良いな」と思えるところを探してみてください。
自動カラーマッチ
複数のクリップがあり、色味がバラバラ……という時には、基準のクリップに合わせて補正してくれる機能もPremiere Proにはあります。
その名も「自動カラーマッチ」。
Lumetriカラーパネル「カラーホイールとカラーマッチ」から実行できます。
使ってみましょう。
最初に、カラーマッチさせたい(調整したい)クリップを選択。
Lumetriカラー > カラーホイールとカラーマッチタブを開きます。
比較表示のボタンをクリック。
プログラムパネルの表示が、2つに変わります。
右の“現在位置”は、色調を合わせたい素材が表示されます。
タイムラインで選択したクリップが表示されているはずです。
左の“リファレンス”には、調整の基準となるクリップを写します。
タイムラインのスライダーを使って「この色調・雰囲気に合わせたい」というクリップを選択してください。
一致を適用ボタンをクリックします。
リファレンスに合わせて、クリップのカラーが変更されます。
カラーホイールとカラーマッチのチェックを使って、適用前と適用後の違いを見比べてみましょう。
もう一度、比較表示のボタンをクリックすると、プログラムモニターが元の表示に戻ります。
ビネット
ビネットでは、画面の角の明るさを調整します。
角を暗くすることで中央を明るく見せて際立たせたり、撮影機材によって暗く写ってしまった角を直したりするのに使います。
適用量はプラスにすると角が明るく、マイナスにすると角が暗くなります。
元々ビネットは古いカメラで撮影した時に起こる減少でした。
このため、強めに角を暗くすると、レトロな印象を与えることも出来ます。
調整レイヤーを活用すると便利
今まではそれぞれのクリップごとに補正を行ってきました。
沢山のクリップを使う動画編集だと、全て設定していくのは大変ですよね。
そんな時には調整レイヤーを使って一括で設定することも出来ます。
調整レイヤーとは、クリップの上に重ねることで、間接的に色調補正やエフェクトを追加することができる機能です。
プロジェクトパネルの新規追加から、調整レイヤーを作成してみましょう。
調整レイヤーの設定ダイアログボックスが表示されるので、OKをクリック。
新しく出来た調整レイヤーをタイムラインに配置します。
調整レイヤーでLookを設定してみます。
タイムライン上で調整レイヤーと重なっている部分は、調整レイヤーに指定したLookの効果でモノクロになっていることがわかります。
調整レイヤーを伸ばせば、最初から最後まで同じカラー補正効果を適用することも出来ます。途中に補正が必要ないクリップが入る場合は、調整レイヤーを分割もしくは複製ればOK。
「共通して使いたい」ものは調整レイヤーを使用すると便利です。
クリップに設定したカラー補正を使いたいときは?
「クリエイティブタブとLook」の項目などで、ボートのクリップに設定した補正効果。この効果を調整レイヤーにうつすことも出来ます。
わかりやすいように、一旦、ボート映像のクリップではクリエイティブとビネットをOFFにしておきます。
ワークスペース左上のグループから、エフェクトコントロールパネルを開きます。
Lumetriカラーの項目のところで右クリックして、コピーを選択。
ショートカットキーでもコピーできます。
タイムラインで、調整レイヤーを選択。
エフェクトコントロールパネルで、コピーした効果を貼り付けます。
Lumetriカラーが2つ並んだ表示になります。
モノクロにした上のLumetriカラーは非表示にします。
調整レイヤーの方でクリエイティブとビネットをONにすれば完了です。
調整レイヤーの注意点
調整レイヤーは、タイムラインで自分よりも下のトラックにあるクリップ全てに影響します。
非表示にしていたロゴやテキストを表示してみると、下図のようになります。
わかりやすいよう、調整レイヤーはモノクロのlookを使っています。
映像はモノクロ、ロゴはカラーで表示させたい。
という場合は、調整レイヤーの位置(重ね順)を変えるとできます。
ここまでで、カラー補正の基本操作は終了です。
これだけの操作ができれば、映像のカラーやトーン補正はほぼ問題なくできるでしょう。自分好みに色を付けていくカラーグレーディングはとっても楽しいので、触りながら覚えていってください。
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